とある貧しい国。満月を見上げながら、音楽団員のギター弾きの青年が歌う。
青年は、裕福な隣国のお姫様の歌声が忘れられなかった。
もう一度歌っておくれ。月に向かって。きっと月はその声を届けてくれるだろう。もう一度聴かせておくれ。君の声を。きっと月はその声を届けてくれるだろう。
国同士仲は良かったが、貧富の差はなかなか埋まらなかった。
年に一度だけ、お互いの文化を披露し合う宴が開かれると、お姫様は歌で両国民を魅了した。
青年は満月になると、いつも歌うのだった。
Noom myns tea sain’o O〜...♪
どこの国の言葉でもなければ、誰でも歌える。
どこにも、なににも属していなければ、
それはすべての人の歌になれる。
あなたが何を信じていようと。
あなたが何派であろうと。
あなたがどこに住んでいようと。
あなたが何色であろうと。
あなたが誰を愛し、誰を憎んでいようと。
あなたが何語を話そうと。話さなかろうと。
歌は、決して選ばない。
ジャズだろうと、フォークだろうと、ロックだろうと、パンクだろうと、オペラだろうと、ブルースだろうと、ヒップホップだろうと、クラシックだろうと、雄叫びだろうと、遠吠えだろうと、さえずりだろうと。
誰かのした意地悪が、次の意地悪に繋がったり、
その意地悪によって、誰かは優しい人になったり。
その優しさが、次の優しさに繋がり、それは巡り、もしかしたら誰かの怒りに結びつくかもしれない。
そうしてぐるぐると回る。
目的地はあるようでないようで。
O...
はじまりはどこなのか。
おわりはどこなのか。
丸い地球の上で、人間はなぜ丸く治まることができないのか。三日月と十字架はなぜ認め合えないのか。
なぜ認め合えないのかを、こちらがわからないうちは
結局は、平和な世など生まれない。
こちらは選ばない。
どこの国の言葉でもないことで、
どこにも属さないことで、
すべての人の歌になることができればと。
なににもこだわらないことで、
なにも意味を持たないことで、
すべての人のものになることができるようにと。
この歌を世界中の人と歌う景色は
どんなに素晴らしいだろう。